友人や親族に頼まれて、借金の連帯保証人になってしまったけれど、やっぱりやめたい。
そう思っているけれど、どうやったら辞められるかわからず悩んでいらっしゃる方はいませんか?
こんな相談がありました。
相談「幼馴染の友人に頼まれて連帯保証人になりました。友人は事業をやっていて、銀行から連帯保証人を求められたようです。一旦はOKしたものの、でも後からよく考えるとやっぱり怖いしやめたくなりました。どうしたら良いでしょうか?」
連帯保証人は一度ハンコを押してしまったら、二度と辞められないのでしょうか?
辞められる場合はどのような方法を取ればいいのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
連帯保証人をやめたい時は誰に言う?
冒頭の相談のように、友人の借金の連帯保証人になってしまっていたとします。
まず最初に思いつくのは借金をしている張本人=主債務者ではないでしょうか?
しかし、連帯保証人になるというのは、主債務者とあなた(連帯保証人)との契約ではありません。
あなた(連帯保証人)とお金を貸した相手との契約です。そのため、主債務者にやめたいと言っても、やめさせてもらうことはできません。
言うべき相手は、お金の貸主(債権者)。
主債務者にお金を貸した銀行や金融業者、個人の相手です。
なぜ連帯保証人が必要だったのか?を考える
そもそも相談のケースで、友人はなぜ連帯保証人が必要だったのでしょうか?
連帯保証人になるということは、借金の張本人が払えなくなった時は、その人の代わりにあなた(連帯保証人)がお金を返すことを、貸し主に対して約束する契約です。
あなたが連帯保証人になるという条件(担保)があるからこそ、貸し主は主債務者に対してお金を貸したのですから、その担保はそうそう簡単に手放してくれないことは容易に想像がつきますよね。
現実もその通りです。
そもそも、連帯保証人という担保がないと貸せないと、貸し主が判断したということは、最初からそれだけ主債務者の資産状況や返済に対する不安があった証拠だと言えます。
返済が間違いなくなされるだろうという見通しがあれば、連帯保証人などつけずとも、お金を貸してくれるはずです。
つまり、連帯保証人が辞めたいと言ったからといって、貸し主が簡単に辞めさせてくれる可能性はほぼゼロです。
辞めさせてもらえる?
簡単にはやめさせてもらえないことが分かりましたね。
でも、連帯保証人を辞められるケースはあります。
可能性としては次の4つです。
任意に連帯保証人契約を解除してもらう
貸し主に「連帯保証人を辞めたい」と伝えてみます。
さきほど説明した通り、連帯保証人が必要なのにはそれなりのわけがあるのですから、これで解除できる可能性は限りなくゼロです。
ただし、貸し主が個人である場合など、柔軟な対応が望めそうな場合は、ダメもとでも言ってみる価値はあるかもしれません。
他の連帯保証人を連れてくる
銀行に申し入れをして、他の連帯保証人と交代してもらう。という方法です。
この場合、他の連帯保証人は主債務者が探して来なければなりません。
健康なサラリーマンの連帯保証人の代わりに、85歳基礎年金しかもらっていないおばあちゃんを連れてきたところで銀行はOKしないであろうことは想像に難くありません。
なぜなら、連帯保証人は主債務に対する担保なわけですから、弁済能力が必要だからです。
逆に、連帯保証人が、かなり高齢になった、脳梗塞などで障害が残り働けなくなった、認知症などで判断能力がなくなった、という理由で連帯保証人をおりたい場合であれば、連帯保証人としての弁済能力がないわけですから、他の弁済能力のある連帯保証人に交代することは、むしろ貸し主も協力してくれるはずです。
ただし、何度も言いますが、代わりの連帯保証人を貸し主が探してくれることはありません。
代わりの連帯保証人を探してくるのは主債務者の仕事です。
しかし、主債務者もすでに連帯保証人がいるにも関わらず、その人の都合で苦労して他の連帯保証人を探してくれることはないでしょう。つまり、他の連帯保証人を探すのは、今の連帯保証人(あなた)の仕事、ということになります。
連帯保証人が自己破産をして、弁済能力がなくなった時
もしも、連帯保証人であるあなたが自己破産をすると、まだ現実化していない連帯保証債務からも逃れることができます。
この場合、主債務者や貸し主にあなたから何らかの連絡を取る必要はありません。
代わりの連帯保証人を探す必要もありません。
主債務者がまだ順調に支払を続けていて、あなたのところに連帯保証債務の請求が来ていない状態であっても、あなたの自己破産手続の債権者に、その連帯保証債務をあげることができます。
自己破産をするということは、借金を全てなくすということです。この時、あなたが連帯保証人となっている借金は「将来の求償権」という名前の種類の債権となり、債権者にあげることができるのです。
ただし、自己破産をしたとしても、自己破産の債権者に名前をあげておかなかった場合は、後日、連帯保証債務の請求を受けたら支払をしなければならない事態になってしまいます。
債権者として名前が挙がっていなければ、自己破産の効力が及ばないので注意が必要です。現時点で請求が来ていなくても、債権者にあげる、という手続を忘れずに行ってください。
詐欺・錯誤を主張して争う
他の連帯保証人も探せない、自己破産するほどの状況でもない、という場合はどうすればいいのでしょう?
契約時に不備がなかったかを振り返ってみましょう。
連帯保証人として契約する時は、連帯保証人になる人にとってはデメリットが非常に大きいため、厳格な手続を経なければなりません。
それが一つでも欠けていた場合は、それを理由に契約自体がそもそも成立していない、と主張することができるのです。
この方法であれば、そもそも契約していないのですから、代わりの連帯保証人を探してくる必要もありませんし、自己破産で全財産を失うこともありません。
冒頭の相談のケースでいうなら、納得していなくて友人の説明が不十分だった、騙されたって主張するわけですね。
債権者から騙されて連帯保証人になっていませんか?
あなたが連帯保証人になることをOKするに至るまでの説明で、主債務者から「絶対に迷惑はかけないから、大丈夫」などと口約束された程度では、「騙された」とは言えません。
しかし、「不動産に抵当権がついているから大丈夫」「他の連帯保証人がいるから大丈夫」などという条件を安心材料として説明されていたのに、実はそれが嘘だったらどうでしょうか。残念ながらそれだけでは騙されたから契約解除、とまではいかないのですが、それを貸し主が知っていたら話は違ってきます。
例えば、貸し主の銀行の担当者に、主債務者が他に連帯保証人がいるから大丈夫と言っていますが本当ですか?と問い合わせをしており、大丈夫だと返事をもらっている、などの場合は、契約の「錯誤」による取り消しが可能です。
似たような例で言えば、主債務者の事業の状況や資金繰りは順調ですか?と銀行の担当者に問い合わせをして、大丈夫だとの回答だった場合も、本当は危なかったからこそ連帯保証債務が回ってきているのですから、騙された=「詐欺」行為として保証契約を取り消せる可能性があります。
脅されて連帯保証人になっていませんか?
たとえば、チンピラに囲まれて、無理矢理連帯保証人欄にサインをさせられたりしていませんか?
脅迫行為の元に交わされた契約は「瑕疵(欠陥)ある意思表示」といって、貸し主が知っているかどうかに関係なく、契約を取り消せます。
しかし、安易にこの方法で解除しようとするとさらなる危険行為を招く可能性がありますから、契約時に脅迫があった場合は、自分で対処せず、弁護士に相談してください。
意思能力がないのに連帯保証人にさせられていた場合
知的障害者の方や、認知症の方など、本人が自分の判断で何かを選択することができない状態の人が連帯保証人にさせられていた場合は、契約そのものを無効にできます。
連帯保証人になる前に、すでに成年後見人がついている状況であった場合は、本人の保護のため、契約の取消権があります。
もし、成年後見人がついていない状態でも、契約時の意思能力がなかったと裁判で主張し、認められれば連帯保証人の契約をなかったことにできます。
知らない間に連帯保証人にされていた
家族がかってに実印を持ち出したなど、自分が連帯保証人になることに同意していないのに、連帯保証人にされてしまっている場合があります。
そんな場合は、「無権代理」という違法行為ですので、連帯保証人としての責任を取る必要はありません。
関連記事:妻が勝手に私の実印を使って、私を連帯保証人にしていた。保証債務を支払わなければいけないか。
賃貸・車のローンの連帯保証人を解除できるか問題
質問とは若干離れますが、賃貸、車のローンの連帯保証人について解除する方法について述べていきます。
賃貸の連帯保証人はやめられる
賃貸の連帯保証人はやめることが出来ます。
ただし、いきなりやめるのではなくて、まずは家主に相談してください。
そして家主に「これ以上連帯保証を続けることはできない。不満なら賃貸契約を解除して欲しい」と申し出てください。
滞納家賃があって、すでに連帯保証人の自分が負担しているケースなら、話は早いです。
家主としては、家賃保証がなくなるのは大問題なので、賃貸物件の借り手に「別の連帯保証人を連れてくるか、引っ越してほしい」と申し出ます。
そして、賃貸物件の借り手が引っ越すか、別の連帯保証人を連れてくれば、解決です。
無事に自分の連帯保証義務は解除されました。
車のローンの連帯保証人は解除しにくい
車のローンの連帯保証人は解除しにくいです。
なぜなら、相手が金融機関であることが多く、連帯保証人を非常に大事にしているから。
連帯保証人が車のローンを保証しなければ、ローン会社はカーローンを認めなかったことになります。
家賃に関しても同じなのですが、解約しない限り永遠に続く家賃と、総額に限りがあるカーローンは扱いが違うのです。
まとめ
連帯保証人を抜けるのは、非常に困難です。
今回の事案でも、錯誤・詐欺があったと主張することも難しそうなので、厳しいですね。
ただし、自分が他の債務に追われているのであれば自己破産で連帯保証債務もチャラにすることができます。
また、契約時に詐欺行為や錯誤、脅迫があった場合や、認知症など意思能力がないのに契約させられていた場合などは、連帯保証人契約自体が取り消せる可能性がありますので、弁護士など専門家に相談してみてください。