アパートや借家を借りる時、親や家族が連帯保証人としてサインすることが一般的ですが、近年、「家賃保証会社」が保証人となることで、親族などのサインが不要な物件が出てきています。
まだ歴史が浅いビジネスですので、まだまだその内容まで広く認知されている業種とはいいがたい部分があります。
このような相談がありました。
今になって、不安になってきました。家賃保証会社とは何ですか?この物件を契約して大丈夫だったのでしょうか」
この相談者さんは、家賃保証会社というものをよく知らないまま契約してしまったことを不安に思っているようでした。
家賃保証会社とはどのようなものなのでしょうか。
家賃保証会社とは
核家族化や、高齢者の一人暮らし世帯の増加、派遣など非正規雇用の増加、外国籍の方の増加など、連帯保証人になれる人が身近にいない人が増えているという社会情勢を背景に、家賃保証会社というビジネスが誕生しました。
不動産を借りたい人が自分で保証人を用意できなくても、第三者である家賃保証会社が、保証人になることによって、賃貸物件を借りることができるという、大変ありがたいシステムです。
また、貸し主にとっても、家賃保証会社が保証人になってくれた方がビジネスライクに家賃の回収を行うことができます。
このように、家賃保証会社には、不動産を貸す人、借りる人どちらにとっても、安心して契約ができるというメリットがあります。
しかし、家賃に加えて家賃保証会社に手数料を支払わなければいけないため、契約する側としては、出費がかさむなど、良い点ばかりではないようです。
また、保証人もいるのに保証会社にも契約させようとする不動産業者がいたり、相談者さんのように、説明が不十分で何のお金かわからないまま支払いをさせられたりと、うっかりしていると損をしてしまうケースもあります。
家賃保証会社を利用する場合は、その中でもできるだけきちんとした会社を選びたいものです。
借り主が家賃保証会社に支払うお金
アパートなどを借りたら、大家さんに毎月家賃を支払いますね。
家賃保証会社付きの物件の場合は、家賃に加えて、保証料の支払いが必要になります。
保証料の支払方法は、保証会社によって様々ですが、契約更新時にまとめて支払ったり、毎月の家賃に上乗せして支払ったりという方法があります。
ただ総じて言えるのは、通常の賃貸より、入居時の初期費用が高額になるケースが多いということです。
入居時に、通常の賃貸借契約にかかる敷金礼金以外に、保証会社に対して1か月分~1.5か月分の家賃相当額を支払わなければならないケースが多くあります。
そして、契約更新時に0.3か月~0.5か月分などの家賃相当額の支払が、契約している期間はずっと続くことになります。
家賃保証会社は大家さんから見てもメリット大
大家さん目線で考えても、家賃を保証してくれる会社があることは、安心材料になります。
入居者が家賃を滞納したり、夜逃げしたりして家賃収入が得られなくなった場合に、入居者の変わりに家賃を払ってくれる手続がスムーズだと、経済的な損失が少なくて済みます。
一般の個人が連帯保証人として名前を書いていたとしても、その人に請求し、交渉し、支払をしてもらうという一連の流れを大家さんがやるには時間も労力もかかります。
しかし、家賃保証会社であれば、滞納家賃の支払いは家賃保証会社がやってくれますし、その後の面倒なことは家賃保証会社がやってくれます。
大家さんから見ると、入居者の家族に保証人になってもらうよりも、回収が確実で手間が少ないということになります。
家賃を滞納した場合はどうなる?
もし、通常、家賃を滞納してしまった場合、その状態が続くと、強制退去をさせられることがほとんどです。(記事「家賃を滞納しているけど時効で逃げられる?」を参照)
それにプラスして、保証人に対して請求が行きます「関連記事:賃貸マンションの保証人の責任とは?保証人から契約解除できる」。
しかし、家賃保証会社がついている場合はどうでしょうか。
その場合も、家賃を滞納し続けると強制退去させられる可能性が高くなります。
それにプラスして、保証人に請求が行くという形は同じです。
しかし、その後が異なります。
家賃保証会社は、大家さんに家賃を立て替えて支払ったので、「求償権」を得たことになります。(「関連記事:保証人が返済すると得る「求償権」とは。請求される可能性はある?」を参照)そのため、借り主は、家賃保証会社から、滞納家賃の請求を受けることになります。多くの場合、それには利息が付されてくることになりますので、実際に滞納した家賃より高い金額を支払わなければならなくなります。
その際の利息は家賃保証会社によって違いますが、契約書に必ず記載がありますから、最初によく確認しておきましょう。
また、家賃保証会社は個人の大家さんより取り立てが厳しいという傾向にあるようですから、その点も念頭に置いておく必要があるでしょう。
家賃保証会社のトラブルは?
まだ家賃保証というシステムができてから歴史が浅いため、様々なトラブルが起こっていることが分かっています。
トラブル1:不動産会社から契約時に家賃保証会社に対するきっちりした説明がないまま契約させられる。
不動産会社が、契約時にする説明は自社の物件についてがほとんどで、家賃保証会社についての説明はさらっとしかされない、もしくは全くされないというケースがあります。
今回の相談者さんもこのような状態で不信感を募らせたということでしたね。
しかし、不動産会社で賃貸物件を契約した場合であれば、契約時に家賃保証会社の人と直接話をする機会はほぼゼロです。
ですから、わからないまま契約してしまい、契約更新時の手数料のことを聞いていなくてびっくりするというトラブルや、毎月の家賃に上乗せして支払う保証料に気付かず家賃自体が滞納になってしまう、などというトラブルが発生しています。
トラブル2:不動産会社から連帯保証人になってくれる人がいるにも関わらず、家賃保証会社と契約するように言われる。
両親が健在で仕事もあり、連帯保証人になっても良いと言ってくれていても、不動産会社の方が、家賃保証会社との契約しかダメだと言ってくる物件もあります。
さきほど述べたように、不動産会社としては、家賃保証会社の方が安心というメリットがあるため、不動産会社の一方的な都合で、借り主側の希望が通らず、本来であれば不必要な出費が必要になってしまう可能性があります。
トラブル3:家賃保証会社を自分で選べない。
不動産会社と提携している家賃保証会社との契約しか選択肢がない場合があります。他の家賃保証会社の方が安くても、そっちは選べないということで損をしてしまう場合があります。
トラブル4:家賃保証会社自体が倒産してしまう。
家賃保証会社自体が破産してしまった場合、自分には何の落ち度がなくても、連帯保証人がいなくなってしまいます。
もし、家賃保証会社が倒産しても、支払った保証料は返ってきません。そのため、その後に他の家賃保証会社と再契約し、想定外の多額の出費が必要になってしまったり、大家さんから新たな保証人を付けないと退居と迫られてしまったりというトラブルが発生してしまいます。
トラブル5:法律の整備がなされていないので、トラブルがあった時にどこに相談して良いかわからない。
家賃保証会社はまだ新しいビジネスなため、法律で規制や保護などがなされていない状態です。業界団体も加入率が低く、全てをカバーできているとは言えないのが現状です。
そのため、何かトラブルが起こった時でも、すぐにどこに相談していいか分からないという状態になってしまいやすいのです。
なお、もしも、家賃保証会社とトラブルになった時は、契約という消費活動全てが対象となりますので、消費生活センターに相談するのが良いでしょう。
まとめ
相談者さんには、家賃保証会社は、「何か怪しい企業であったり、騙されている、という訳ではないので安心しても良いということに加えて、メリット、デメリットがある」ということをお伝えしましたところ、安心していただくことができました。
家賃保証会社は、入居者からみると、さまざまな境遇の方でも賃貸物件を契約することができるというメリットがあり、大家さんからみると、家賃滞納時の回収に安心感があるというメリットがあります。
しかし、当然ながら入居者には家賃に上乗せした出費がかかることと、ビジネス自体が新しいため、いろいろなトラブルが発生しやすいというデメリットがありました。
仕組みを理解して、契約し、賢く利用してください。