「根保証」とは、自分が保証していると思っている金額以上に、のちのち請求がくる恐れがある契約です。
100万円の連帯保証人になったところ、100万円以上の連帯保証請求が来てびっくり!そんなときは「根保証」が原因になっている可能性があります。
これは、借金の保証人になった人が「連帯保証人」だと思っていたものが、実は「根保証」(連帯根保証契約)だったことによるものです。
こんな相談がありました。
根保証の相談事例「10年前に知人の頼みで金融業者からの借金200万円の連帯保証人になったはずだったのですが、今年に入って800万円の請求が来て驚愕しています。
なぜこんな高額な請求が自分に来るのかわかりません。
200万円なら覚悟はしていましたが、800万円も払えません。どうしたらいいでしょうか。」
この人は、200万円の借金の連帯保証人になったはずなのに、どうして800万円もの請求を受けることになったのでしょうか?
また、請求が来たら、絶対に払わなくてはいけないのでしょうか?
詳しくみていきましょう。
根保証って何?
保証人、連帯保証人、という言葉は誰でも聞いたことがあると思いますが、「根保証」というとあまり聞き馴染みのない言葉です。
さきほどの相談者の方はこの「根保証」がどういうものだかよくわからないままサインをしたために、びっくりするほど高額な請求を受ける結果になってしまったのです。
200万円の連帯保証人になった自覚はあったのですが、「根保証」を通常の「保証」や「連帯保証」と勘違いしていたのです。
「根保証」とは正式には「連帯根保証契約」といい、上限の決まったある一定の「枠」(極度額)以内なら自由に借り増しできる借金に対する保証のことです。
金融業者は、借金が極度額に達するまでは連帯保証人に通知せずに自由に主債務者に貸し付けを行えます。
そのため極度額以内の増減であれば、連帯保証人は現在自分が保証している借金がいくらあるのかわからない、という状態になりますから、根保証人にとっては、非常にハイリスクな契約なのです。
根保証と連帯保証人とはどう違う?
通常の保証や、連帯保証なら、主債務者が借金を返済していけば残金が減り、保証人の保証残金も同じく減っていきます。
しかし、根保証の場合は、極度額が800万円なら、上限を800万円とし、その中で増減する枠(極度額)そのものに対する保証なので、主債務者が支払を続けて残金が減っても、借り増しして借金額が増えても、根保証額は変わらず800万円なのです。
「根」の一文字が入るだけで、通常の保証とは全く違うものなので、連帯保証人になるよりもさらに慎重に注意して根保証人になる必要があります。
全額払わなければいけないの?(その1・元本確定)
ここからは、根保証の逃げ方を解説します。
一般的な連帯保証からの逃げ方はしたの関連記事で解説しているので、良かったらこちらも確認してください。
根保証は、金額が極度額以内ならいくらでもいいという流動的な契約でしたね。
しかし、それでは根保証は永遠にと終わらない可能性が出てきてしまいます。
しかし、安心して下さい。
民法では、根保証を永遠の保証にしないために、ちゃんとこの部分に対する規定があります。
ポイントは、貸金等根保証契約を結んだ時に、元本確定期日を定めていたかどうかです。
元本確定日とは、保証すべき借金残金を固定する日です。
民法では、「元本の確定期日を定めなかったときは、契約日から3年で確定する」と定められています。
また、契約締結日から5年以内の確定日の定めがある場合は、その定めた日が元本確定日となりますし、5年以上先の日付が確定日として定めてあった場合は、その確定日は無効となり、契約日から3年が経過した日が元本確定日となります。
ですから、先ほどの相談者さんの場合は、借金に対する根保証契約を結んだのが10年前(仮に2008年)の2月1日付けでした、契約時に元本確定期日を定めていない場合には、3年後(2011年)の2月1日を経過した日(=2011年2月2日)時点の借金残高で元本が確定する、ということになります。
上記の相談者さんは、今年に入って800万円の請求を受けた、ということですが、弁護士を通して金融機関で元本確定日である2011年1月2日時点の借金残高を確認したところ、150万円であったことが判明しました。
さらに調べてみると、知人の事業の業績が悪化し借金が増えたのはここ1~2年のことだったことがわかりました。
そのため、7年前の元本確定日時点では業績は悪化しておらず、借金は契約当初の200万円を下回っていたのです。
さらに、元本確定日以降の主債務者の返済状況を確認したところ、元本確定日以前に存在した負債部分に対する返済はすでに終わっており、相談者さんには、800万円の返済義務はないということが分かりました。
なお、元本確定日は連帯保証する負債の金額が確定した日であり、その日をもって根保証人から外れられるという意味ではありませんので誤解がないようにしてください。
相談者さんのように、元本確定日時点で借金残高が減っている人ばかりとは限りません。元本確定日時点で極度額の上限に達している場合の方が多いことの方が多いのが実情です。
なお、元本確定については、元本確定日が到来すれば自動的に確定するのですが、その時点での元本(=主債務の残高)を確認しておくことをおすすめします。
確定した債権についての今後の返済予定も一緒に聞いておくとより安心です。
なお、個人的に行うより、弁護士や司法書士といった専門家に間に入ってもらって問い合わせをした方が、曖昧な説明でごまかされるなどのトラブルを避けることができるでしょう。
全額払わなければいけないの?(その2・説明義務)
相談者さんのように元本確定日に借金残金が少なく、すでにその部分に対しては返済が終わっているというケースもありますが、逆に元本確定日より前の時点で連帯根保証債務が回ってくる可能性もありますし、元本確定日時点で極度額いっぱいの借り入れがあり、確定した元本が800万円であるケースもあります。
それでは全額支払うしかないのでしょうか?
その場合は、契約時に2つの条件を満たしていたかがポイントになります。
極度額
1つ目は、契約時に極度額は設定されているか、という点です。
根保証の契約書に極度額が書かれていなければ、契約自体が無効です。
天井ナシの借金の根保証人になるというのは、根保証人にとってハイリスク過ぎるからです。
書面交付義務
2つ目は、根保証人が個人の場合、その人がしっかり理解できるほどの説明がなされていたか、がポイントになります。
根保証人になるということは、貸す側からすると便利な制度ですが、根保証人にとっては、非常にハイリスクな契約ですから、貸す側に説明義務があります。その説明は口頭ではなく、書面で行われる(書面交付義務)ことに決まっています。
書面が交付されていなければ、充分な説明がなかったとして、裁判によって無効にしてもらえる可能性があります。
逆に、各種条件を記載した書面を交わしているが、実はよく理解していなかった、というのでは、契約自体が錯誤(間違い)で取り消しの主張をするのは難しいと言わざるを得ません。
根保証人になる場合は、後から後悔しないように、契約時に納得するまで、しっかりと金融業者に説明を求めることが重要です。
まとめ
根保証人になるということは、非常にハイリスクなため、契約時に納得するまで説明を受け、極度額を小さくしてもらうなどの工夫をされることをおすすめします。
しかし、すでに根保証人になってしまっている場合は、極度額記載の有無や書面交付が正しくなされているかを確認し、その契約が無効もしくは取り消せるかどうかを調べてみましょう。
また、元本確定日が過ぎている場合は、現時点での保証残高を貸し主に確認してみると、安心材料になります。
しかし、どの作業も個人で行うにはハードルが高いため、自分で行わず、弁護士や司法書士に相談してみることをおすすめします。