主債務者が借金の支払ができなくなった時、貸し主から直接連帯保証人として請求を受ける場合もありますが、最近では、債権回収会社から請求されるケースも一般的になりました。
しかし、連帯保証契約を交わしたに貸し主(債権者)と、請求される債権回収会社とで名前が違うと、関係性がよくわからず不安になりますよね。
連帯保証人として債権回収会社から請求を受けた方からこんな相談がありました。
債権回収会社から連絡を受けた例夫が友人の借金の連帯保証人になりました。
貸し主は銀行や大手の消費者金融ではなく、聞いたこともない金融業者だったので、不安はありましたが、夫は古くからの友人が放っておけず、連帯保証人になってあげたのです。
しばらくして、事業に失敗した夫の友人が夜逃げし、音信不通になりました。
その後、怪しげな男2人が家にやってきて、「借金の債権譲渡を受けた債権回収会社だ。今月中に500万円払え。」と高圧的な態度で言われ怖い思いをしました。
なんだかすごくイヤな感じがするのですが、本当にこの人たちに500万円も支払う必要があるのでしょうか?
この方のケースを例に、債権回収会社への連帯保証債務の返済についてみていきましょう。
債権回収会社とは
債権回収会社とは、不良債権処理のために作られた法律(債権管理・回収業に関する特別措置法=サービサー法)によって、債権を取り立てるという行為を弁護士以外の民間業者でも行えるようにしたことにより、できた会社です。
まだ一般的に浸透した制度であるとは言い切れないため、正規の債権回収会社と似通った名前をうたったニセ債権回収会社による詐欺や、法務大臣の認可を受けていない違法なヤミ債権回収会社も横行しています。
そのため、債権回収会社から請求が来ても慎重に調べてから対処する必要があります。
正規の債権回収会社は、以下の3つの条件を満たしており、法務大臣の許可を受けています。
- 資本金1億円以上
- 取締役に弁護士がいる
- 暴力団など反社会勢力とのつながりがない
法務省のホームページを見れば、全ての債権回収会社の名前と所在地、電話番号が一覧表になって載っていますので、もし債権回収会社を名乗る人や会社から請求がきたら、法務省のホームページを確認してみてください。
さきほどの例の相談者の場合、明らかにその筋の人っぽい男が来た時点で③の条件を満たしていないようです。
法務省のホームページで確認してみても、その男たちが名乗った債権回収会社は登録されていませんでした。
つまり、ニセの債権回収会社だったのです。
債権譲渡とは
債権回収会社から請求が来た、ということは、主債務者が支払をできなくなったため、連帯保証人に請求が回ってきたというだけでなく、主債務者から債権回収会社に債権が移転したということになります。
債権が債権回収会社に移ったということを「債権譲渡」といいます。
債権譲渡をする場合、元の債権者から主債務者に対し、「債権を譲り渡しました」という内容の通知(債権譲渡通知)を発送する必要があります。
債権を譲り受けた側からの通知では効力はありません。「譲渡」と「譲受」と言葉が似ているので、注意が必要です。
また、主債務者に対する債権譲渡通知の発送は絶対条件ですが、保証人に対して債権譲渡通知がなされなければいけないという義務はありません。
今回の相談者さんのように主債務者と連絡が取れなくなっている状況では、債権譲渡通知を主債務者が受け取っているかどうかを確認することができません。
そのため、連帯保証人に対して債権譲渡通知を送ってくる可能性があります。
しかし、連帯保証人が債権譲渡通知を受け取っただけでは債権譲渡が正式になされたとは言えません。
あくまでも借入をした本人=主債務者が通知を受け取らなければならないので、もし債権譲渡がなされたという理由で債権回収会社や保証会社などから請求を受けた場合は、焦って支払をせず、まず、主債務者の手に債権譲渡通知が届いているかどうかを確認することが先決です。
焦って支払をしてしまうと、本来支払うべきではない相手に対して支払をしてしまう可能性があるからです。
違法な債権回収業者から請求を受けたら警察などに相談を
サービサー法ができてからは、銀行や各金融業者は、主債務者からの返済が滞った場合、自社で連帯保証人に対して請求を行うよりも、すぐに債権回収会社に債権譲渡をすることが増えました。
ですから、主債務者が支払えなくなった時、銀行などの貸し主からの連絡が来ることなく、債権回収会社からいきなり直接請求を受けびっくりするようなケースが発生してしまっています。
そこにつけ込んで、違法な債権回収業者、つまり「取り立て屋」が横行しています。
取り立て屋は、乱暴な言動で脅してきたり、暴力団員が取り立てに関わっていたりします。
そのような人たちに個人で対応するのは身の危険がありますので、法務省のホームページに載っていない債権回収業者から取り立てを受けた場合は、すぐに消費生活センター(もしくは国民生活センター)に相談するか、警察に相談してください。
元の債権が違法な金利での貸付でないか確認する
そもそも、怪しい債権回収業者が取り立てをしてきた場合、元の債権も銀行や大手消費者金融などからの貸付ではない可能性があります。
例にあげた相談者の場合も、聞いたこともない名前の金融業者だったと言っていました。元の借り主(主債務者)が、普通の金融業者からの借り入れができない状態で、違法な金融業者から借り入れをしていた可能性があります。
もし、違法な金利で貸付をしている業者だったら、利息制限法で引き直し計算をしたらかなり圧縮される可能性があります。
連帯保証人の立場からでも、元の債権者に対し、取引履歴の開示請求を行うことができますので、確認をしてみましょう。
また、元の債権者がヤミ金であった場合は、一切支払う必要がない可能性もあります。
ただし、怪しい債権回収業者が関わっていることをみても分かる通り、元の債権者も一筋縄ではいかない相手の可能性が高いです。
個人で対応せず、消費生活センターに相談するか、弁護士や司法書士など法律の専門家に相談し、取引履歴の開示を求める方が安全です。
まとめ
連帯保証人として、債権回収業者を名乗る人から請求を受けた場合は、まずその債権回収業者が法務大臣の認可を受けている正規の業者かどうかを確認しましょう。
次に債権譲渡が有効になされているかどうかと、その債権額が本当に正しい債権額かどうかも確認する必要があります。
請求されても、一度まず自分で調べられることがありますので、焦って支払をしないように気を付けましょう。